前回の記事では、社長の時間を生み出し、会社の売上を最大化するためには脱・属人化、すなわち「業務の仕組み化」が不可欠であるとお伝えしました。
「仕組み化が重要なのは分かった。よし、早速マニュアルを作ろう!」 そう意気込んだものの、いざパソコンの前に座ると……
- 「何から書き始めればいいか分からない」
- 「文章で説明するのがとにかく面倒くさい」
- 「苦労して作っても、スタッフが読んでくれる気がしない」
そんな壁にぶつかって、結局後回しにしてしまってはいませんか? その気持ち、痛いほどよく分かります。忙しい日々の業務の中で、マニュアル作成に時間を割くのは至難の業です。
ですが、ご安心ください。今の時代、分厚いファイルに閉じた「紙のマニュアル」を作る必要は一切ありません。
今回は、時間のない小規模事業者でも今日から実践できる、「動画」と「チェックリスト」を活用した、最も効率的で効果的なマニュアル作成術を具体的にお伝えします。これを読めば、「マニュアル作り=面倒な作業」という思い込みが消えるはずです。
なぜ、あなたのマニュアルは「失敗」するのか?
多くの企業で、マニュアル作りが挫折したり、形骸化したりするには、共通の原因があります。
1. 完璧を目指しすぎて完成しない
「隅々まで網羅した完璧なものを作らなければ」という真面目さが仇になります。100点を目指すと、作成に膨大な時間がかかり、途中で挫折します。ビジネス環境は常に変化するので、完璧なマニュアルなど存在しません。「60点で公開し、走りながら修正する」姿勢が重要です。
2. 文字ばかりで分かりにくい
手順を全て文章で説明しようとすると、読む側は大変なストレスを感じます。特に、PCの操作方法などは、テキストで「右上のメニューから〇〇を選択し…」と書くよりも、実際の画面を見た方が一瞬で理解できます。
3. 作ったきりで更新されない
一度作って満足し、ファイルサーバーの奥底に眠ってしまうパターンです。業務内容は変わっていくのにマニュアルが古いままでは、現場は混乱し、誰もマニュアルを信頼しなくなります。
マニュアル作成の「新常識」:動画ファーストのススメ
これらの問題を一挙に解決するのが「動画マニュアル」です。
30代〜50代の経営者様の中には、「動画編集なんてやったことがないし、難しそう」と身構えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、ここで言う動画マニュアルに、YouTuberのような凝った編集やテロップは一切不要です。
あなたが普段やっている作業を、PC画面を録画しながら、「まずはここをクリックして、次にこれを入力します。注意点はここです」と、隣にいる新人に教えるようにブツブツと喋るだけで良いのです。
動画マニュアルのメリット:
- 作成時間が圧倒的に短い: 作業時間プラス数分で完了します。
- 情報量が豊か: 操作のスピード感や、ちょっとしたコツなど、言語化しにくいニュアンスまで伝わります。
- 見る側も楽: 文字を読むより動画を見る方が、負担が少なく理解が早いです。
【超実践編】5分で作れる!最強動画マニュアル作成3ステップ
では、具体的な作成手順を見ていきましょう。特別な機材は不要です。
ステップ1:準備(無料ツールを用意)
PC画面を録画できるツールを用意します。おすすめは、普段Web会議で使っている「Zoom」です。 実はZoomには「一人でミーティングを開始し、画面共有しながらレコーディング(録画)する」という機能があります。これで十分です。 他にも、画面録画に特化した無料ツール「Loom」なども便利です。
ステップ2:撮影(作業しながら実況中継)
- Zoomで「新規ミーティング」を開始し、自分一人だけ参加します。
- 「画面の共有」をクリックし、作業する画面(ブラウザやExcelなど)を映します。
- 「レコーディング」を開始します。
- 「今から〇〇の作業手順を説明します」と話し始め、実際に作業を行います。
- ポイントは、「ここは間違えやすいので注意してください」「大体このくらいの数字になります」など、口頭で補足を入れることです。言い間違えても気にせず、そのまま続けてください。
ステップ3:共有(クラウドに保存)
録画を停止すると、動画ファイルが生成されます。これをGoogleドライブやDropboxなどのクラウドストレージ、あるいはYouTube(限定公開)にアップロードし、そのリンクを社内のチャットツールやNotionなどに貼り付ければ完了です。
たったこれだけです。5分の作業を説明する動画なら、準備を含めても10分あれば完成します。
文字マニュアルは「チェックリスト」だけでいい
動画で全体の流れを理解してもらった上で、実際の作業時に横に置いて確認するための「文字マニュアル」も必要です。
しかし、これは長文の説明書ではなく、「行動手順のみを箇条書きにしたチェックリスト」にしてください。
悪い例(文章形式):
まず、管理画面にログインしたら、左側のメニューバーにある「顧客管理」をクリックしてください。画面が切り替わったら、右上の検索窓に顧客名を入力し、検索ボタンを押します。表示された一覧の中から該当の顧客を選び……
良い例(チェックリスト形式):
- [ ] 管理画面にログインする
- [ ] 左メニュー「顧客管理」をクリック
- [ ] 右上の検索窓で顧客名を検索
- [ ] 対象顧客を選択
いかがでしょうか。後者の方が圧倒的に見やすく、作業の抜け漏れも防げます。NotionやGoogleスプレッドシートを使えば、簡単にチェックボックス付きのリストが作成でき、進捗管理も可能になります。
マニュアルは「成長する会社の資産」
「動画で流れを把握し、チェックリストで抜け漏れなく実行する」。これが最強の組み合わせです。
マニュアル作成は、面倒な雑務ではありません。あなたの会社のノウハウを形式知化し、誰でも再現できるようにするための、極めて重要な「資産形成」です。この資産が積み上がるほど、あなたの会社は人に依存しない強い組織へと成長します。
まずは今日、あなたがこれから行うルーチンワークを一つだけ、Zoomで録画してみませんか? その小さな一歩が、未来の大きな自由時間につながっています。
YLS合同会社では、Notionなどを活用したマニュアル整備の代行や、動画マニュアル導入のレクチャーなど、小規模事業者の皆様の「仕組み化」を具体的にサポートしています。「一人ではどうしても進まない」という方は、お気軽にご相談ください。

