あなたは自分の「時間単価」を知っていますか? 売上を伸ばす経営者が実践する「タイムトラッキング」の威力

あなたは「何に時間を使っているか」を正確に言えますか?

「毎日、夜遅くまで働いているのに、なぜか売上が思うように伸びない…」 「今日も雑務に追われて、本当にやりたかった戦略的な仕事に全く手がつかなかった」

30代、40代、50代。ビジネスの第一線で奮闘する個人事業主や小規模事業者の経営者様から、このような「時間の悩み」を伺わない日はありません。

こんにちは。前回の記事では、「仕事が終わらない理由」として、生産性向上の「はじめの一歩」(やめる・見える化・仕組み化)についてお話ししました。

多くの方から反響をいただいた中で、特にご質問が多かったのが、ステップ2の「見える化」についてです。 モノやお金と違い、私たちの「時間」は、目に見えず、掴みどころがなく、気づけばあっという間に過ぎ去っていきます。

そこで今回は、生産性向上の「要(かなめ)」でありながら、多くの人が実践できていない「時間の見える化=タイムトラッキング」について、徹底的に深掘りします。

この記事を読めば、なぜ「タイムトラッキング」があなたの売上向上に直結するのか、そして、難しそうに聞こえるこの活動を、いかに簡単かつ効果的に始めることができるかが分かります。「時間に追われる経営」から脱却したい方は、ぜひ最後までお読みください。

なぜ「感覚」での時間管理は失敗するのか?

まず、厳しい現実をお伝えしなければなりません。 あなたが「だいたいこれくらい時間がかかっているはず」と思っているその感覚は、ほぼ間違いなく、あてになりません。

人間は、「好きな仕事」の時間は短く感じ、「嫌いな仕事」の時間は長く感じるようにできています。また、「メールチェックに費やしている時間」のように、細切れに発生する作業の合計時間は、驚くほど過小評価しがちです。

「なんとなく忙しい」と感じている時、その正体は、自分でコントロールできない雑務に振り回されている状態かもしれません。

有名な法則に「パーキンソンの法則」があります。

「仕事は、完成するために与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する」

例えば、「1時間あれば終わる資料作成」も、「締切が明日の朝」と言われれば、なぜか明日の朝までかかってしまう。心当たりはないでしょうか?

これは、私たちが「時間」という枠を明確に意識・管理していない限り、時間は際限なく浪費されてしまうことを示しています。「なんとなく」の感覚に頼った時間管理では、この「時間の膨張」から逃れることはできないのです。

タイムトラッキングが経営者にもたらす3つの「絶大なメリット」

では、自分の時間を正確に「記録」し「見える化」するタイムトラッキングは、私たちに何をもたらしてくれるのでしょうか? それは、単なる「効率化」という言葉では片付けられない、経営の根幹に関わるメリットです。

メリット1:正確無比な「現状把握」ができる 全ての改善活動は、正確な「現状把握」から始まります。ダイエットで言えば「体重計に乗る」こと。タイムトラッキングは、あなたのビジネス活動における「体重計」です。 「A社との打ち合わせ準備に、思ったより3時間もかかっていた」 「1日のうち、純粋な請求業務に合計2時間も費やしていた」 この「事実」を知ることこそが、生産性向上の第一歩です。

メリット2:事業成長を妨げる「時間泥棒」を特定できる 記録したデータを見返すと、あなたの貴重な時間を奪っている「時間泥棒」が必ず見つかります。 それは、「目的のないSNSチェック」かもしれませんし、「緊急だが重要ではない電話対応」かもしれません。あるいは、「過剰な資料の作り込み」かもしれません。 こうした「価値を生まない作業」を特定し、排除(または仕組み化)するだけで、あなたの時間は劇的に増え始めます。

メリット3:ビジネスの根幹!「正確な見積もり」と「価格設定」が可能になる これが、経営者にとって最大のメリットです。 例えば、あなたがWebデザイナーだとして、「このランディングページ制作、いくらでできますか?」と聞かれた時、どう答えていますか?

もしタイムトラッキングを実践していれば、「類似の案件では、デザインにXX時間、コーディングにYY時間かかった。だから、これくらいの費用が必要です」と、根拠を持って回答できます。

さらに、あなた自身の「時間単価」を意識できるようになります。 (月の売上目標 ÷ 月の稼働時間)で算出される、あなたの「1時間」の価値です。

「時間単価1万円」を目指すあなたが、1時間かけて「500円の経費精算」を手作業でやるべきでしょうか? 答えは明白です。タイムトラッキングは、安請け合いを防ぎ、自信を持った価格設定を行うための「最強の武器」となるのです。

【実践編】難しくない!今日から始めるタイムトラッキング 3ステップ

「重要性は分かった。でも、面倒くさそうだ…」 そう思われるのも無理はありません。しかし、ポイントは「完璧を目指さない」ことです。まずは簡単に始めてみましょう。

ステップ1:ツールを選ぶ(気負わずに) 記録方法は、あなたに合うもので構いません。

  • アナログ派:
    • 手帳や専用ノートに、作業が終わるたびに「10:00-10:30 メール対応」と書き出す。手軽ですが、後で集計するのが大変です。
  • デジタル派(推奨):
    • Toggl Track (トグル・トラック)Clockify (クロッキファイ) といった無料のタイムトラッキングアプリ。
    • これらは「スタート」「ストップ」ボタンを押すだけで、タスクごとに時間を記録し、自動でグラフ化してくれる優れものです。スマホでもPCでも使えます。
  • 番外編:
    • 普段使っている「Googleカレンダー」に、予定(ブロック)を入れるのではなく、「実績」として作業内容を後から入力していく。これだけでも十分な「見える化」になります。

併せて集計の手間をかけないことが、継続の鍵となります。

ステップ2:記録の「ルール(粒度)」を決める どれくらい細かく記録するかを決めます。

  • 初心者向け: まずは「1時間単位」や「午前:A社案件、午後:B社資料作成」といった「ざっくり記録」から。
  • 中級者向け: 「15分単位」や「タスクごと」(例:「メール返信」「見積書作成」「ブログ執筆」)に記録する。

重要なのは、完璧を目指さないこと。「あ、2時間記録し忘れた!」と落ち込む必要はありません。思い出せる範囲で後から入力すれば良いのです。

ステップ3:まずは「3日間」だけ集中して記録してみる 「これから一生記録し続けよう」と意気込むと挫折します。 まずは、「今週の火・水・木の3日間だけ」と決めて、実験的に記録してみてください。

たった3日間のデータでも、あなたの「時間の使い方のクセ」や「無駄」が、衝撃的なほどハッキリと見えてくるはずです。

「記録して終わり」はNG!時間データを「宝」に変える分析術

タイムトラッキングは、「記録すること」が目的ではありません。「分析し、改善すること」こそが目的です。 集まったデータを「宝」に変える、簡単な分析方法をご紹介します。

まず、記録した作業を、以下の4つのカテゴリーに分類してみてください。

  • カテゴリー1:収益に直結する仕事(A: 価値創出業務)
    • 例:商品・サービスの開発、顧客への直接の提案・納品、コンサルティング
  • カテゴリー2:収益に間接的に関わる仕事(B: 投資業務)
    • 例:マーケティング活動、ブログ執筆、スキルアップのための学習、人脈構築
  • カテゴリー3:管理・雑務(C: 維持業務)
    • 例:経理、請求書発行、メール対応、社内会議、移動時間
  • カテゴリー4:その他(D: 浪費・プライベート)
    • 例:目的のないネットサーフィン、休憩(休憩は重要ですが、長すぎる場合など)

分析は簡単です。 1. 「C(維持業務)」を徹底的に減らす ここは、あなたの時間単価を下げる最大の要因です。「C」に分類された作業は、「やめる」(前回の記事参照)、「自動化・仕組み化する」(例:経理ソフト導入)、あるいは「外注(アウトソーシング)する」ことを真っ先に検討します。

2. 「A(価値創出業務)」の割合をどう増やすか? 「C」を減らして生まれた時間を、ここに投下します。ここがあなたの売上の源泉です。

3. 「B(投資業務)」の時間を意識的に確保する 忙しいと真っ先に削られがちな「B」ですが、これは未来への種まきです。売上を持続的に伸ばす経営者は、この「B」の時間を意図的にスケジュールに組み込んでいます。

タイムトラッキングが変える、あなたの「経営者」としての視点

タイムトラッキングを続けると、あなたの「時間」に対する意識が劇的に変わります。

  • 「この仕事、本当に自分がやるべきか?」と自問するようになり、「やらないこと」を明確に決断できます。
  • 「時間単価」の意識が根付くため、「この金額では割に合わない」と、自信を持って価格交渉や(時には)お断りができるようになります。安請け合いから脱却できるのです。
  • もし従業員を雇用している場合、感覚的だった「あの仕事、どれくらい時間かかってる?」をデータで把握でき、適切な業務配分や工数管理の基盤ができます。

何より、「時間に追われる」という受動的な状態から、「時間を主体的にコントロールする」という、経営者本来の姿を取り戻すことができるのです。

あなたの「1時間」の価値を最大化するために

タイムトラッキングは、「自分を監視する息苦しいもの」ではありません。 それは、あなたの「1時間」の価値を最大化し、ビジネスを次のステージに進めるための、極めて戦略的な経営活動です。

現状を正確に把握することなくして、正しい改善はあり得ません。

「忙しい」という感覚的な言葉から卒業し、データに基づいて時間を管理する。それこそが、30代、40代、50代の成熟した経営者に求められるスキルです。

さあ、まずは今夜、寝る前に「今日、自分は何に何時間使ったか」を、簡単でいいので書き出してみませんか?

その小さな一歩が、あなたの明日を、そしてあなたのビジネスの未来を大きく変えるきっかけになるはずです。

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