生産性向上と聞くと、新しいツールを導入したり、特別なスキルを身につけたりすることを想像しがちです。しかし、最も効果的なアプローチの一つは、まず現状の業務を見直し、「何を減らし、何を外し、何を変えるか」を明確にすることです。ここでは、この3つのステップを成功させるための実践的なノウハウを詳しく見ていきましょう。
1. 「捨てる」勇気:ムダな業務を徹底的に排除するノウハウ
「捨てる」とは、不要な業務、非効率な作業、時間の浪費につながる習慣を思い切ってやめることです。これが最もインパクトのある生産性向上策となることも少なくありません。
実践ノウハウ:業務の「棚卸し」と「評価基準」
- 全ての業務を書き出す:「見える化」が第一歩
- まずは、個人事業主の方も、従業員を抱える経営者の方も、ご自身や従業員が日常的に行っている全ての業務をリストアップしてください。ルーティンワーク、突発的なタスク、会議、メールチェック、資料作成、顧客対応、報告業務など、大小問わず詳細に書き出します。
- 可能であれば、それぞれの業務に費やしている時間も記録してみましょう(例:タイムトラッキングツールや手動の記録)。これが「ムダ」を発見する客観的なデータになります。
- 各業務を「仕分け」する評価基準書き出した業務を以下の基準で評価し、「捨てる」候補を見つけます。
- 「本当にその業務は必要か?」:目的の再確認
- 「なぜこの業務をしているのか?」「この業務の目的は何か?」を問い直します。単なる慣習で続けている業務はありませんか?
- もし目的が曖昧だったり、既に形骸化している場合は、「やめる」ことを強く検討します。
- 例:毎週行っている定例会議の目的が「情報共有」だけであれば、チャットツールや共有ドキュメントで代替できないかを検討する。
- 「成果に直結しているか?」:貢献度の測定
- その業務が売上、顧客満足度、事業成長など、会社の目標達成にどれだけ貢献しているかを冷静に評価します。
- 時間と労力を費やしているにも関わらず、貢献度が低い業務は「捨てる」候補です。
- 例:誰も読んでいない報告書作成、意味のない形式だけの稟議書、過剰な装飾に時間をかける資料作成。
- 「もっと効率的な方法はないか?」:代替案の模索(「変える」にも繋がる視点)
- すぐに「捨てる」のが難しい場合でも、「やり方を変えれば、実質的に”捨てる”に等しい効率化ができる」という視点も持ちましょう。
- これは次の「変える」に繋がる視点ですが、「捨てる」検討の段階で一緒に考えておくことで、よりスムーズな移行が可能です。
- 「本当にその業務は必要か?」:目的の再確認
成功の秘訣:捨てる勇気と「試しにやめてみる」
「これは本当にやめても大丈夫か?」という不安はつきものです。しかし、完璧を目指すのではなく、まずは「試しに1週間、この業務をやめてみよう」という感覚でスモールスタートを切るのがおすすめです。案外、何も問題が起きないことが多く、そこから自信を持って完全に「捨てる」ことができます。
2. 「任せる」スキル:アウトソーシングと自動化を賢く活用するノウハウ
自分ですべてを抱え込まず、他者(外部のプロ)やツールに「任せる」ことで、あなたの時間と労力を本来集中すべきコア業務に再配分できます。
実践ノウハウ:何を、誰に、どう任せるか?
- 「任せるべき業務」の選び方以下の特徴を持つ業務は、「任せる」のに適しています。
- 専門性が高く、自社にノウハウがない業務: 経理、税務、法務、高度なWebサイト制作、複雑なシステム開発など。
- 定型的で繰り返し発生する業務: データ入力、資料作成(定型フォーマット)、SNSの日常投稿、簡単な顧客サポート、秘書業務など。
- 自社のコア業務ではないが、必要な業務: 採用活動の一部、福利厚生の手続き、特定の専門調査など。
- 時間の割に、生産性が低い業務: 専門知識がないために時間がかかる作業など。
- 「誰に任せるか」:アウトソーシング先の選び方
- クラウドソーシングサイトの活用: 簡単なライティング、データ入力、デザインなど、単発・小規模な業務に適しています。(例:クラウドワークス、ランサーズ)
- 専門業者・フリーランスの活用: 経理代行、Web制作会社、社会保険労務士、税理士、マーケティングコンサルタントなど、特定の専門分野に特化したプロ。(例:各士業事務所、ITベンダー、コンサルティング会社)
- バーチャルアシスタントサービス: 秘書業務、スケジュール管理、情報収集など、多様な事務作業をリモートで代行。(例:フジ子さん、タスカル)
- ツールの活用(自動化): RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の自動化、マーケティングオートメーション(MA)ツール、チャットボットなど。
- 「どう任せるか」:依頼時のポイント
- 明確な指示と期待値の共有: 何を、いつまでに、どのような品質で、何を目的として欲しいのかを具体的に伝えます。
- コミュニケーション計画: 連絡方法、頻度、担当者を事前に決めます。定期的な進捗確認やフィードバックは必須です。
- 信頼関係の構築: 長期的なパートナーシップを意識し、お互いのビジネスを理解し合う姿勢が重要です。
- 情報共有の仕組み: 必要な情報(パスワード、ファイルなど)を安全かつスムーズに共有できる環境を整えます(クラウドストレージの利用など)。
成功の秘訣:コストとリターンのバランスを見極める
アウトソーシングにはコストがかかりますが、そのコストが削減できる時間や得られる成果(売上向上、品質向上、ストレス軽減など)に見合うかを慎重に判断しましょう。長期的な視点で投資対効果を考えることが重要です。
3. 「変える」思考:業務プロセスとツールを最適化するノウハウ
「変える」とは、既存の業務のやり方や使用しているツールを見直し、より効率的で効果的な方法に改善することです。デジタルツールの導入がその代表例です。
実践ノウハウ:変革のためのロードマップ
- 業務フローの「見える化」と「再設計」
- 現在の業務フローを詳細に図式化(フローチャート作成など)し、ボトルネックや重複作業がないかを確認します。
- 次に、「こうあるべき」という理想の業務フローをゼロベースで設計し直します。この際、「捨てる」「任せる」で判断した内容も反映させましょう。
- 例:顧客からの問い合わせ対応フロー → メールからチャットツールへの移行、AIチャットボットによる一次対応導入。
- 適切なデジタルツールの選定と導入
- 目的と課題の明確化: 「何のためにツールを導入するのか」「どんな課題を解決したいのか」を具体的に定義します。ツール導入自体が目的にならないように注意してください。
- 機能と費用のバランス: 必要な機能が備わっているか、予算に見合っているかを比較検討します。無料プランや試用期間を活用して、自社に合うか試すのがおすすめです。
- 使いやすさ(UI/UX): どんなに高機能でも、使いにくければ定着しません。従業員が直感的に操作できるか、学習コストはどうかを確認します。
- 連携性: 既に使っている他のツールとの連携が可能かどうかも重要です。バラバラのツールを使うと、かえって手間が増えることがあります。
- 主なツールの種類と活用例:
- コミュニケーションツール: Slack, Microsoft Teams(情報共有の迅速化、メール削減)
- プロジェクト管理ツール: Asana, Trello, Backlog, Notion(タスクの進捗管理、チーム連携)
- 顧客管理(CRM): Salesforce, Zoho CRM, HubSpot(顧客情報の集約、営業活動の効率化)
- オンラインストレージ: Google Drive, Dropbox, OneDrive(資料共有、共同編集)
- 経費精算・会計ソフト: freee, マネーフォワード クラウド会計(経理業務の自動化、ペーパーレス化)
- 勤怠管理システム: ジョブカン勤怠管理, King of Time(勤怠管理の自動化、集計の手間削減)
- マニュアル化とトレーニング
- 新しい業務プロセスやツールを導入したら、必ずマニュアルを作成し、従業員がいつでも参照できるようにします。
- 使い方や変更点を理解してもらうためのトレーニングや説明会を十分に行いましょう。これが定着の鍵です。
成功の秘訣:小さく始めて、PDCAを回す
一度に全てを変えようとせず、まずは一部の業務や部署で試験的に導入(スモールスタート)し、効果を検証しながら改善していく「PDCAサイクル」を回すことが重要です。
生産性向上は「選択」と「行動」の連続
「捨てる」「任せる」「変える」は、それぞれが独立したステップではなく、互いに関連し合い、相乗効果を生み出します。
- ムダな業務を「捨てる」ことで、コア業務に集中する時間が生まれます。
- コア業務以外の専門性の高い業務や定型業務を外部に「任せる」ことで、さらなる時間と専門性を確保できます。
- 残った業務や新しい業務フローを、最適なツールや方法に「変える」ことで、効率は最大化されます。
これらの実践的なノウハウをあなたのビジネスに適用することで、日々の業務が劇的に変化し、より少ない労力で大きな成果を生み出すことができるでしょう。
もし、具体的な業務での「捨てる」「任せる」「変える」のご相談があれば、yls 合同会社がお手伝いできますので、お気軽にお声がけください。