判断がすべて社長に集まる会社では、現場の仕事が止まりやすくなります。
社員が動かないのではなく、判断基準や確認ルールが整っていないために、社長へ戻ってきている場合があります。
現場からの相談が多い。小さな確認まで社長に来る。社員に任せたつもりでも、最後は社長が判断している。
この状態が続くと、社長の時間は細かく分断されます。結果として、会社の成長に向けた仕事に時間を使いにくくなります。
この記事では、判断が社長に集中する原因と、現場で決められる仕事を増やすための考え方を整理します。
判断が社長に集中する会社で起きていること
まず確認したいのは、判断が社長に集中している会社で何が起きているかです。
従業員30名以下の会社では、社長と現場の距離が近い分、現場からの相談が社長に集まりやすくなります。最初は、スピードを上げるために社長が判断していたかもしれません。
しかし、その状態が続くと、現場は「まず社長に聞く」ことが当たり前になります。
たとえば、次のような状態です。
- 現場が判断待ちになる
- 社長が確認しないと仕事が進まない
- 小さな判断まで社長に戻る
- 社長の時間が細かく分断される
- 経営に使う時間が残らない
この状態では、現場のスピードも落ちます。
社長も常に呼ばれるため、考える時間が取れません。新しい施策、売上を伸ばすための準備、社員育成、仕組みづくりに時間を使いたくても、目の前の判断で一日が終わってしまいます。
前回の記事では、経営者に時間がない原因として、確認作業や判断の集中を整理しました。判断が社長に集まる状態は、経営者の時間を奪う大きな原因の一つです。
社員が判断できないのは、能力だけの問題ではありません
「社員が判断してくれない」
経営者の方から、このような相談を聞くことがあります。
もちろん、経験や知識が足りない場合もあります。ただ、社員が判断できない理由を、能力だけで考えてしまうと、本当の原因が見えにくくなります。
現場が判断できない背景には、次のようなことがあります。
- 判断材料がない
- どこまで任されているか分からない
- 失敗したときの対応が決まっていない
- 報告と相談の違いが曖昧になっている
- 判断した結果、怒られるのではないかと不安がある
この状態では、社員は自分で決めにくくなります。
結果として、社長に確認する方が安全になります。社長から見ると「また聞きに来た」と感じますが、現場から見ると「聞かないと判断できない」状態になっている場合があります。
ここで大切なのは、社員を責めることではありません。
現場が判断できる材料を整えることです。
判断が戻ってくる本当の原因は、基準が共有されていないことです
判断が社長に戻ってくる大きな原因は、判断基準が共有されていないことです。
社長の頭の中には、さまざまな基準があります。
この金額なら現場で進めてよい。このお客様の場合は社長に相談する。納期がここまで変わるなら確認する。トラブルの兆しがあれば早めに報告する。
こうした基準が社長の中だけにあると、現場は判断できません。
現場で判断するためには、次のような線引きが必要です。
- ここまでは現場で決める
- この条件なら社長に相談する
- この内容は報告だけでよい
- この場合は事前確認が必要
- 迷ったときは何を基準に決めるか
報告と相談の違いも整理が必要です。
報告は、すでに起きたことや進んでいることを共有するものです。相談は、判断が必要なものです。ここが曖昧になると、すべてが社長への相談になります。
そうなると、社長は常に判断を求められます。現場も、社長の返事を待つ時間が増えます。
判断の集中を減らすには、社長の頭の中にある基準を、現場で使える形にする必要があります。
現場で判断できる仕事を増やすには、ルールと資料が必要です
現場で判断できる仕事を増やすには、ルールと資料が必要です。
ここでいうルールは、現場を縛るためのものではありません。現場が迷わず動くためのものです。
たとえば、次のようなものがあります。
- 判断基準
- 業務フロー
- よくあるケースへの対応例
- 報告ルール
- 社内共有資料
- お客様への説明資料
- トラブル時の初動ルール
これらが整っていると、社員は「何を見れば判断できるか」が分かります。
反対に、資料やルールがない状態では、社員は毎回社長に確認するしかありません。社長は同じ説明を繰り返し、現場は返事を待つ。この流れが続くと、会社全体の動きが遅くなります。
弊社では、経営者と現場をつなぐ業務改革を大切にしています。
経営者が感じている課題と、現場で起きている実態をすり合わせたうえで、必要な仕組み、資料、業務フロー、IT活用を整えます。
考え方だけを伝えるのではなく、現場で使えるコンテンツに落とし込むことが、判断の集中を減らすためには必要です。
判断の集中を減らす3ステップ
判断の集中を減らすには、いきなり全社的な改革を始める必要はありません。
まずは、社長に戻ってきている判断を見える状態にします。そのうえで、現場で決められる範囲を少しずつ増やしていきます。
1. 社長に戻ってくる判断を洗い出す
最初に、社長に戻ってくる判断を洗い出します。
どの部署から、どんな相談が来ているのか。どの仕事で判断待ちが発生しているのか。毎回聞かれる内容は何か。
ここを整理すると、社長が本当に見るべき判断と、現場に渡せる判断が見えてきます。
小さな判断も書き出します。金額、納期、顧客対応、社内調整、トラブル対応など、何度も発生する判断ほど、基準化しやすい場合があります。
2. 現場で決められる範囲を決める
次に、現場で決められる範囲を決めます。
たとえば、金額の範囲、納期の範囲、対応方法の範囲、社長へ相談する条件などを整理します。
ここで重要なのは、すべてを現場に渡すことではありません。
社長が見るべき判断は残します。そのうえで、現場で決められる判断を増やします。
この線引きがあると、社員は動きやすくなります。社長も、必要な判断に集中しやすくなります。
3. 小さく試して、判断基準を更新する
最後に、小さく試します。
判断基準は、作った瞬間に完成するものではありません。実際に現場で使ってみると、足りない基準や分かりにくい表現が出てきます。
そのたびに、基準を更新します。
弊社では、過去の経験から、現場が試せるように小さく改革することを重視しています。環境を整えても、現場で使われなければ改革は進みません。
だからこそ、一度に大きく変えるのではなく、現場で試せる単位に分けて進めます。
ITを入れる前に、判断の流れを整理しましょう
判断が社長に集中している会社では、ITツールを入れれば解決すると考える場合があります。
もちろん、ITが役立つ場面はあります。情報共有、申請、承認、進捗管理など、ツールを使うことで仕事が見えやすくなることはあります。
ただし、ITツールだけでは判断の集中は解決しません。
なぜなら、ツールに入れる前の判断基準が曖昧なままだと、結局、確認は社長に戻るからです。
誰が判断するのか。どこまで現場で決めるのか。何を報告し、何を相談するのか。これが決まっていなければ、ツールを入れても運用が止まりやすくなります。
弊社では、ツールありきではなく、仕事の流れと現場の状態を整理することを重視しています。
ITを使う場合も、現場で使われ続ける状態にすることが前提です。
社長が判断を抱え込まないために、まず現状を整理しましょう
判断が社長に集まる状態は、社員だけの問題ではありません。
判断基準が共有されていない。報告と相談の違いが曖昧になっている。現場で決めてよい範囲が分からない。こうした状態が重なると、現場は社長に確認するしかなくなります。
まず取り組むべきことは、判断の流れを整理することです。
社長が見るべき判断と、現場で決められる判断を分ける。判断基準や確認ルールを整える。小さく試しながら、現場で使える形に直していく。
この流れができると、社長がすべての判断を抱え込む状態から抜け出しやすくなります。
前回の記事では、現場に仕事を任せられない理由として、判断基準や資料の不足を整理しました。判断が社長に集中する状態は、その延長にあります。
判断がすべて社長に集まっている状態は、社員だけの問題ではありません。
仕事の流れ、判断基準、確認ルールを整えることで、現場で決められる仕事は増やせます。
YLSでは、経営者と現場の両方を見ながら、社長が抱えている判断を整理します。
まずは個別相談フォームから、判断が集中している原因を確認してみてください。

