2026.08.31コミュニケーション

「言った言わない」が起きる会社の原因とは|中小企業で伝達ミスを仕組みで減らす方法

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「言った言わない」が起きる会社の原因とは|中小企業で伝達ミスを仕組みで減らす方法

「言った言わない」のすれ違いが社内で繰り返されると、仕事のやり直しだけでなく、社員との信頼関係まで削られていきます。この記事では、従業員30名以下の中小企業でこの問題がなぜ起きるのかを掘り下げ、個人の注意力に頼らずに減らしていく考え方を整理します。

  • 「言った言わない」の正体は個人の記憶力の問題ではなく、口頭指示に依存した仕事の流れの問題である
  • チャットツールを入れるだけでは解決しない。指示が「どこに残り、誰がいつ確認するか」の整理が先
  • 減らす手順は「指示の通り道を1本に決める→完成条件を言葉にする→確認のタイミングを決める」の順番

「言った言わない」とは何か

「言った言わない」とは、指示や依頼の内容について、伝えた側と受けた側の認識が食い違い、あとから「そんな話は聞いていない」「いや、確かに伝えた」という水掛け論になる状態のことである。中小企業の現場では、社長からの指示、営業と製造の間の連絡、お客様との約束事など、あらゆる場面で起こります。

この問題が厄介なのは、どちらかが嘘をついているわけではない点です。伝えた側は「言ったつもり」、受けた側は「そうは聞いていないつもり」で、双方とも本気でそう記憶しています。つまり、記憶や誠実さを争っても答えは出ません。争うほど人間関係が悪くなり、「もう任せられない」「何を言っても伝わらない」と、社長が仕事を抱え込む方向に進んでしまいます。

実際には、「言った言わない」が多い会社と少ない会社の差は、社員の優秀さではなく、指示や依頼が「形に残る流れ」になっているかどうかの差です。つまりこれは人の問題ではなく、仕事の流れの問題として扱うのが出発点になります。

「言った言わない」が起きる会社の4つの原因

原因を「個人の不注意」で片づけてしまうと、対策は「気をつけろ」「メモを取れ」という精神論で終わり、同じことが繰り返されます。仕組みの側から見ると、原因はおおむね次の4つに整理できます。

原因1:口頭指示に依存している

すれ違いの最大の原因は、重要な指示が口頭だけで飛び交っていることです。廊下ですれ違いざまに頼む、作業中の社員に声をかける、電話でついでに依頼する。こうした伝え方は速い反面、記録がどこにも残りません。人の短期記憶は思っている以上に頼りなく、聞いた瞬間は理解していても、別の作業を挟むと細部が抜け落ちます。とくに「急ぎで」「いい感じに」「例の件」といった省略された言葉は、受け手が自分の解釈で補うため、認識のずれが生まれやすくなります。

原因2:指示の「完成条件」が曖昧なまま渡される

「あの見積もり、早めにお願い」という指示には、いつまでに・どの範囲で・どんな形で出すのかが含まれていません。受けた側は自分なりの解釈で進め、出てきたものを見た社長が「頼んだものと違う」と感じる。これも広い意味での「言った言わない」です。指示を出す瞬間に完成条件(期限・範囲・形式・優先度)を言葉にする習慣がないと、記録を残していても解釈のずれは残ります。

原因3:記録が残る場所が決まっていない

口頭・電話・メール・LINE・チャット・付箋と、連絡手段が人によってバラバラな会社では、「どこかには残っているが、どこにあるか分からない」状態になります。探せない記録は、無いのと同じです。さらに、同じ案件の連絡が複数の経路に分かれると、片方だけを見た人が「聞いていない」となり、記録があるのにすれ違いが起きます。手段が多いこと自体ではなく、「この種類の連絡はここに残す」という決めごとが無いことが問題です。

原因4:確認と判断が社長に集中している

指示の解釈に迷ったとき、確認できる相手が社長しかいない会社では、社長が忙しいほど確認は後回しになり、社員は「たぶんこうだろう」で進めます。その結果として手戻りが起き、社長は「なぜ確認しないんだ」と感じ、社員は「聞ける雰囲気ではなかった」と感じる。判断の基準が社長の頭の中にしかないことが、すれ違いの温床になっているのです。判断が社長に集中する構造そのものについては、確認作業が多い会社の原因とは|社長が現場確認に追われる理由と減らし方でも詳しく解説しています。

「言った言わない」を減らす3ステップ

では、どこから手をつければよいのでしょうか。答えを先に言うと、順番は「①指示の通り道を1本に決める → ②完成条件を言葉にする型を作る → ③確認のタイミングをあらかじめ決める」です。ツール選びはこの整理が終わったあとで構いません。

ステップ1:指示の通り道を1本に決める

まず、「仕事の依頼・指示は、最終的に必ずここに残す」という場所を1つ決めます。既に使っているものがあるなら、チャットでもホワイトボードでも構いません。大事なのはツールの新しさではなく、「口頭で伝えた場合も、あとで必ずその場所に一行残す」という運用を全員で揃えることです。口頭のやり取り自体を禁止する必要はありません。口頭は速さのため、記録は正確さのためと役割を分ければ、現場の負担は小さく抑えられます。

このとき、いきなり全社の全連絡を対象にすると続きません。最初は「お客様との約束」「金額に関わる指示」など、すれ違ったときの被害が大きい種類の連絡に絞って始めるのが現実的です。範囲を絞って続くようになってから広げるほうが、結果的に定着します。

ステップ2:指示の「完成条件」を言葉にする型を作る

次に、指示を出すときに埋める項目を決めます。難しい様式は要りません。「何を・いつまでに・どんな形で・迷ったら誰に聞くか」の4点が一行で書いてあれば十分です。この型があると、指示を出す側は頭の中を整理してから渡すようになり、受ける側は足りない情報をその場で聞き返せるようになります。「聞き返すのは失礼ではなく、型を埋めるための当然の行為」と位置づけられることが、心理的にも大きな効果を持ちます。

ステップ3:確認のタイミングをあらかじめ決める

最後に、進行中の仕事について認識を合わせるタイミングを、あらかじめ仕事の流れの中に組み込みます。たとえば「着手前に一度、完成イメージを口頭で復唱してもらう」「作業の3割時点で一度見せてもらう」といった決めごとです。完成してから食い違いが発覚すると全部やり直しになりますが、3割時点なら軌道修正で済みます。やり直しの発生源を早い段階で摘む考え方は、手戻りが多い原因とは|中小企業でやり直しが減らない理由と減らし方で扱っている内容と地続きです。

ツール導入より先に、仕事の流れを整理する

「言った言わないをなくすには、チャットツールや日報アプリを入れればいい」と考えたくなりますが、順番が逆だとうまくいきません。連絡の通り道や完成条件の型が決まっていない状態でツールだけを足すと、連絡経路が1本増えるだけで、かえって「どこに書いてあるか分からない」状態が悪化することさえあります。ITはあくまで、整理された流れを速く回すための道具です。

判断基準として、次の3つの問いに答えられるかを確認してみてください。①社外との約束や金額に関わる指示は、どこを見れば残っているか即答できるか。②社員が指示の解釈に迷ったとき、社長以外に確認できる基準や相手があるか。③食い違いが起きたとき、犯人探しではなく「流れのどこで漏れたか」を振り返る場があるか。3つとも答えに詰まるなら、ツールの検討より先に仕事の流れの整理から始める段階です。何から整理するかの全体像は、業務フローを見える化する方法|中小企業が最初に整理すべき仕事の流れが参考になります。

私たちYLSは、経営者の側だけでも現場の側だけでもなく、両方の話を聞いたうえで指示や連絡の流れを整理する立場で支援しています。これまで100社以上の中小企業を見てきた中でも、「言った言わない」が多い会社ほど、ツールの不足ではなく流れの未整理が原因だったケースがほとんどでした。ある会社では、指示の通り道を1本に揃える整理から始めて、確認ややり直しに使われていた時間が大きく減った事例もあります(効果は会社の状況によって異なります)。

まずは「どこですれ違っているか」を一緒に整理することから

「言った言わない」は、社員を責めても、社長が我慢しても解決しません。指示がどこを通り、どこで消えているかを一度見えるようにすれば、直すべき場所は案外少ないことが多いのです。とはいえ、自社の連絡の流れを自分たちだけで客観視するのは難しいものです。社内の人間には「当たり前」になりすぎて、漏れている場所が見えないからです。

YLSの個別相談では、いきなり改善の契約を勧めるのではなく、まず現状のすれ違いがどこで起きているかを伺い、最初に手をつける優先順位を一緒に整理します。「うちの場合はどこから直すべきか」を確かめる場として、お気軽にご活用ください。

よくある質問

Q1. 社員にメモを取るよう指導していますが、それでも食い違いが減りません。なぜですか?

メモは受け手の解釈で書かれるため、指示側の意図とずれたまま記録される場合があるからです。受け手のメモに頼るのではなく、指示を出す側が完成条件(何を・いつまでに・どんな形で)を言葉にして渡し、決めた場所に残す流れに変えると、解釈のずれ自体が減っていきます。

Q2. チャットツールを導入しましたが、結局電話と口頭に戻ってしまいました。どうすればよいですか?

ツールが定着しないのは、「どの連絡をチャットに残すのか」の決めごとが無いまま導入した場合によく起こります。全部を移そうとせず、「お客様との約束と金額に関わる指示だけは残す」のように範囲を絞り、口頭で伝えた後に一行残す運用から再開するのが現実的です。道具より先に、流れの決めごとを見直してみてください。

Q3. 小さな会社なので、わざわざ記録に残すのは大げさではないでしょうか?

全連絡を記録する必要はありません。すれ違ったときの被害が大きいもの、たとえば納期・金額・仕様に関わる連絡だけで十分です。少人数の会社ほど1件の手戻りの影響が大きく、また社長との口頭のやり取りに依存しがちなので、範囲を絞った記録はむしろ小さな会社にこそ効果が出やすい取り組みです。

Q4. どの程度の状態になったら、外部に相談すべきでしょうか?

「同じ食い違いが3回以上繰り返されている」「対策を決めても1か月続かない」「原因の話をすると社内が犯人探しの雰囲気になる」のいずれかに当てはまるなら、社内だけでの解決は難しくなっている段階です。外部の目で連絡の流れを見えるようにするだけで、直す場所が明確になることが多いため、早めの相談をおすすめします。

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