2026.08.01コミュニケーション

手戻りが多い原因とは|中小企業でやり直しが減らない理由と減らし方

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手戻りが多い原因とは|中小企業でやり直しが減らない理由と減らし方

「同じ資料を何度も作り直している」「現場に任せたはずの仕事が、結局やり直しになって戻ってくる」。従業員30名以下の会社の経営者から、こうしたご相談をいただくことは少なくありません。残業が減らない会社をよく見ていくと、新しい仕事が急に増えたわけではなく、一度終わったはずの仕事をもう一度やっている時間が積み上がっているケースが目立ちます。

手戻りは、担当者の不注意や経験不足が原因だと受け止められがちです。しかし実際に仕事の流れをたどると、多くの場合は個人ではなく、仕事の渡し方や確認のタイミングに原因があります。この記事では、中小企業で手戻りが減らない理由を整理し、明日から着手できる手順と、改善が進んでいるかを見分ける判断基準をお伝えします。

この記事の3つのポイント

  • 手戻りは担当者の能力の問題ではなく、判断基準が言葉になっていないことと、情報の受け渡しの決め方から生まれやすい
  • 減らす順番は「事実を書き出す→発生した工程を特定する→迷いやすい判断を1枚にまとめる」。ITツールの検討はその後に置く
  • 改善できているかは、手戻りの件数だけでなく「差し戻しが起きる工程」と「社長に判断が戻ってくる回数」で確認する

手戻りとは何か|「やり直し」は作業の失敗ではなく流れの結果

手戻りとは、いったん完了したはずの作業が、後工程での指摘や条件の変更によって前の工程に差し戻され、もう一度やり直しになることである。見積書の作り直し、図面や仕様の描き直し、社内資料の修正、顧客への再確認、請求内容の訂正などが典型例です。作業そのものは一度きちんと行われているのに、成果として残らないという点に特徴があります。

ここで押さえておきたいのは、手戻りを「誰かの失敗」として数えないことです。ある会社で受注後の仕様変更が続いたとき、経営者は営業担当の確認不足だと考えていました。ところが流れを追うと、契約前に顧客へ確認すべき項目が決まっておらず、担当者ごとに聞く内容が違っていたことが分かりました。つまり原因は本人ではなく、確認項目が仕組みとして存在しなかったことにあります。個人を注意しても、次の案件で同じことが起きるのはこのためです。

もうひとつの特徴は、手戻りが起きた瞬間には誰も困っていないように見えることです。担当者はその場で直し、上司も「今回は仕方ない」で処理します。1件あたり30分の直しでも、月に20件起きていれば10時間です。1件ずつが小さいので問題として上がらず、月末に「なぜか今月も忙しかった」という感覚だけが残ります。

忙しさの正体は「新しい仕事」ではなく「二度目の仕事」

経営者が時間を取られる場面を分解すると、新規の判断より、すでに一度決めたことをもう一度確認している時間のほうが長いことがあります。「これで進めていいですか」と再度聞かれる、出てきた成果物を見て指示を出し直す、顧客からの指摘を受けて自分が動く。こうした二度目の仕事が増えると、経営に使える時間が削られ、現場側も「どうせ社長の確認が入る」と考えて手前で止まるようになります。手戻りは作業時間の問題であると同時に、判断が経営者に戻り続ける構造の入口でもあります。この構造については判断が社長に集中する会社の原因とは|現場が動ける仕組みの整え方もあわせてご覧ください。

手戻りが多い会社に共通する4つの原因

業種が違っても、手戻りが減らない会社の原因はおおむね次の4つに整理できます。自社に当てはまるものを見るだけでも、着手すべき場所は絞れます。

原因1:判断基準が言葉になっていない

「品質はこのくらい」「この条件なら値引きしてよい」「ここまでは現場判断でよい」。経験のある人ほど、こうした基準を感覚として持っています。しかし言葉になっていないため、担当者は自分の判断が合っているか分からず、無難な形で出してから指摘を受けて直す、という進め方になります。判断基準が共有されていない状態では、やり直しは避けにくくなります。

原因2:情報が受け渡しの途中で欠ける

営業から製造へ、現場から事務へ、担当者から協力会社へ。仕事が人をまたぐたびに、口頭で補われていた前提が抜け落ちます。「言ったつもり」「聞いたはず」の食い違いは、受け渡す情報の項目が決まっていないときに起こります。何を書いて渡すかが定まっていない限り、丁寧な人ほど時間をかけ、急いでいる人ほど漏らす、というばらつきが残ります。

原因3:確認が最後にまとめて行われる

作業が9割終わってから経営者や上司が確認する流れになっていると、方向性の違いが見つかったときの手戻りが最大になります。着手前の30分の確認で防げたはずのことを、完成後に丸ごとやり直しているわけです。確認の回数ではなく、確認する位置が問題である点は見落とされがちです。

原因4:直した内容が次の案件に残らない

やり直した結果は、その案件だけで消えてしまうことがほとんどです。次に同じ状況が来ても、担当者が違えば同じ手戻りが起こります。振り返りの場がないというより、振り返った内容を次に使う置き場が決まっていない、というのが実態に近い状態です。

手戻りを減らすために、まず整理する3つのステップ

手戻りを減らす取り組みは、いきなり業務全体の見直しから入ると止まります。忙しい会社ほど、範囲を絞って事実を集めるところから始めるほうが続きます。ここでは順番を3つに分けてご説明します。

ステップ1:直近1か月の手戻りを事実として書き出す

まず、この1か月で実際に起きたやり直しを、思い出せる範囲で書き出します。記録項目は「いつ」「どの仕事で」「何が差し戻されたか」「直すのにかかったおよその時間」の4項目だけにします。ここで大事なのは、原因や責任を書かないことです。原因欄を作ると書きにくくなり、記録そのものが集まらなくなります。10件も集まれば傾向は見えてきます。

ステップ2:どの工程で発生したかを分類する

次に、書き出した手戻りを工程ごとに並べ替えます。受注前の確認、着手前の指示、作業中、納品前の検査、請求時といった区切りで十分です。多くの場合、件数は特定の工程に偏ります。全部を直そうとせず、件数か時間の合計が最も大きい工程を1つだけ選びます。仕事の流れを紙に並べる進め方は業務フローを見える化する方法|中小企業が最初に整理すべき仕事の流れで具体的に扱っています。

ステップ3:迷いやすい判断を1枚にまとめる

選んだ工程で、担当者が迷った判断を3つから5つ挙げ、A4用紙1枚に「この条件ならこう進める」という形で書きます。網羅した規程は必要ありません。分量が多いほど読まれなくなるため、1枚に収め、迷いが出るたびに書き足す運用のほうが定着します。あわせて、確認の位置を後ろから前に移せないかを検討します。着手前に15分の打ち合わせを入れるだけで、完成後の作り直しが減った例もあります。

改善が進んでいるかを見分ける4つの判断基準

手戻りの取り組みは、成果が見えないと続きません。次の4つを月に一度確認すると、進んでいるかどうかを判断できます。

  • 差し戻しが起きる工程が前に移っているか:納品前で見つかっていた問題が着手前で見つかるようになれば、直す時間は小さくなります。件数が同じでも改善は進んでいます。
  • 社長に判断が戻ってくる回数が減っているか:現場で決められる範囲が広がった証拠になります。
  • 同じ内容の手戻りが繰り返されていないか:新しい種類の手戻りに変わっているなら、前の原因はつぶせています。
  • 担当者が変わっても結果が大きく変わらないか:人に依存した状態が緩んできたかどうかを示します。属人化そのものへの向き合い方は中小企業の属人化を解消する方法|人に頼りすぎない業務改革の進め方で解説しています。

ITツールを入れる前に確認しておきたいこと

手戻りの話をすると、チャットツールや管理システムの導入から検討が始まることがあります。しかし、判断基準が決まっていない状態でツールを入れると、確認のやり取りが増えるだけで、やり直しの量は変わりません。ツールは決まっている流れを速くする道具であり、決まっていない流れを決めてはくれないためです。

私たちが支援に入るときも、経営者の考えている進め方と、現場で実際に起きている流れの両方をうかがいます。この2つはずれていることのほうが多いからです。経営者は「任せている」と考え、現場は「最後は社長が決める」と考えている。この認識のずれが残ったままでは、どんな仕組みも定着しません。これまでのご支援でも、ツール選定より先に確認の位置と判断基準を整理したほうが、導入がうまくいった例が多くありました。

外部に相談する場合も、ツールの提案から入る相手か、仕事の流れの確認から入る相手かで進み方が変わります。依頼前に見ておきたい点は業務改善コンサルの選び方|中小企業が依頼前に確認すべきポイントにまとめています。

よくある質問

手戻りが多いのは、担当者の教育不足が原因ではないですか?

教育が関係する場面もありますが、同じ人が別の仕事では手戻りを起こしていないなら、原因は本人ではなく流れの側にあると考えたほうが実態に合います。まずは工程ごとの件数を見て、特定の工程に偏っていないかを確認してください。偏りがあれば、そこの判断基準か情報の渡し方に問題が残っています。

手戻りを書き出すと、犯人探しのようになりませんか?

記録項目に担当者名と原因を入れないことで避けられます。目的は責任の特定ではなく、どの工程で起きやすいかを知ることだと最初に伝えてください。記録を見せながら「ここで止まりやすい」と工程の話として扱えば、現場からも情報が出やすくなります。

どのくらいの期間で減りますか?

会社の状況によって差がありますが、1か月分の記録を取り、工程を1つ絞って基準を1枚にまとめるところまでで、2週間から1か月程度を見ておくと現実的です。最初は1工程に限って変化を見るほうが判断しやすくなります。

人手が足りず、記録を取る時間もありません。何から手をつければよいですか?

全社で記録を始める必要はありません。手戻りが最も多いと感じている業務を1つだけ選び、2週間、経営者の手元でメモを取るところから始められます。まず対象を絞ることが、時間がない会社ほど重要になります。

まず、手戻りが起きている場所を一緒に整理しませんか

手戻りは原因が仕事の流れに散らばるため、社内だけで見ると「気をつける」という結論に落ち着きやすいテーマです。しかし、書き出して工程ごとに並べれば、手をつける場所はたいてい1つか2つに絞れます。順番さえ間違えなければ、大きな投資をせずに変えられる部分は残っています。

「どの工程から整理すればよいか分からない」「社内で話しても堂々巡りになる」という段階でしたら、個別相談で現状をうかがいながら、次に動くべき優先順位を一緒に整理するところから始めていただけます。売り込みの場ではありませんので、いま起きている手戻りの状況をそのままお話しください。

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