「業務改善をやらないといけないのは分かっている。でも、自分たちでやるべきか、外部に頼むべきかが分からない」。従業員30名以下の会社の経営者から、いちばん多く聞く迷いのひとつです。社内でやれば費用は抑えられそうですが、日々の業務に追われて進まない。外部に頼めば早そうですが、費用に見合うのか、そもそも自社の事情を分かってもらえるのかが不安になります。
この記事では、自社でやる業務改善と外部に頼む業務改善がそれぞれ何を指すのかを整理し、どちらを選ぶかの判断基準と、判断する前に自社で整理しておくべきことをまとめます。ツールを入れるかどうかではなく、仕事の流れをどう整理するかという視点で考えていきます。
この記事の3つのポイント
- 自社でやるか外部に頼むかは「費用」ではなく「社内に時間と第三者の視点があるか」で判断する
- 判断の前に、困っている業務・かかっている時間・止まっている場所の3点を自社で書き出しておく
- 全部を任せる/全部を自前でやるの二択ではなく、整理だけ外部、実行は社内という組み合わせが現実的

「自社か外部か」で迷いが長引く本当の理由
この迷いが長引く会社には、共通点があります。それは、比較しているつもりで、実は比較対象が定まっていないことです。「自社でやる」といっても、誰が、いつ、どの業務を、どこまで整理するのかが決まっていません。「外部に頼む」といっても、何をどこまで頼むのかが決まっていません。中身が決まっていないもの同士を並べても、判断はできません。
もうひとつの理由は、判断材料が費用だけになっていることです。外部に頼めば費用が発生しますが、自社でやる場合も社員の時間という費用がかかっています。会議で3人が2時間話し合えば、それだけで6時間分の人件費が動いています。自社でやる選択肢を「無料」と考えていると、比較そのものが成り立ちません。
そして最も見落とされやすいのが、社内の人間には自社の仕事の流れが見えにくいという構造です。毎日その手順で仕事をしている人にとって、その手順は「当たり前」であり、疑問の対象になりません。二重に入力している、確認のために一度社長を経由している、といった非効率は、外から見ると分かりやすいのに、中にいると見えないのです。
判断を先送りすると何が起きるか
先送りしている間も、手戻りは発生し、確認は社長に集まり、繁忙期がまた来ます。「落ち着いたら考えよう」の落ち着く時期は、たいてい来ません。先送りのコストは請求書として届かないため意識されにくいのが厄介です。まずは「どちらにするか」ではなく「何を決めれば判断できるか」に問いを変えてみてください。
自社でやる業務改善とは、どういうものか
自社でやる業務改善とは、社内の人材が主体となって、自社の業務の流れを洗い出し、手順やルールを見直して定着させていく取り組みである、と定義できます。担当者を決め、対象業務を絞り、現状の手順を書き出し、無駄や重複を見つけて手順を変え、それを続けていく一連の作業です。
強みは、自社の業務内容や取引先の事情まで分かったうえで進められること、進め方を自社の都合に合わせられること、そして取り組みを通じて社内に改善のノウハウが残ることです。
一方で限界もあります。最大の壁は時間で、改善を担当できる人はたいてい現場で最も忙しい人です。「通常業務に加えて改善も」と依頼すれば、優先されるのは通常業務のほうです。次の壁は視点で、内部の人間には当たり前が見えません。三つ目は社内力学です。部署間や社歴の上下が絡む手順の変更は、社内だけでは決着がつきにくい場面があります。

外部に頼む業務改善とは、どういうものか
外部に頼む業務改善とは、社外の第三者が現場と経営の両方に入り、業務の流れを整理し、優先順位と進め方を示したうえで、実行と定着を支援する取り組みである、と定義できます。ここで重要なのは、外部に頼むこと=丸投げではないという点です。手順を実際に動かすのは自社の社員なので、外部が担うのは主に「整理」と「進行」と「第三者としての判断」です。
強みは3つあります。まず、改善のための時間が確保されること。次に、他社の事例を踏まえた比較の視点が入ることです。「うちだけが特殊だ」と思っていた業務が、実は他社でも起きている一般的な詰まりだった、というケースは珍しくありません。三つ目は、社歴や立場に縛られず「この確認は不要では」と言えることです。この立場は、社内の人間には作りにくいものです。
限界もあります。業種特有の細かい事情は、最初から把握しているわけではありません。理解のための時間が必要で、その期間は社員の説明時間も発生します。また、外部が去ったあとに元の手順へ戻ってしまう会社もあります。これを避けるには、社内に引き継ぐ前提で進めているかどうかを、依頼前に確認しておくことが大切です。
自社か外部かを判断する5つの基準
次の5つに順番に答えていくと、判断はかなり絞り込めます。
- 基準1:担当者が週に何時間使えるか/週3時間以上を継続して確保できるなら自社でも進みます。確保できないなら外部の力を借りたほうが現実的です。
- 基準2:対象業務が部署をまたぐか/1部署で完結するなら自社向き。営業と製造、現場と事務のように部署をまたぐ調整が必要なら、第三者が入ったほうが決着が早くなります。
- 基準3:過去に自社で試して続かなかったか/途中で止まった経験があるなら、同じ体制での再挑戦は同じ結果になりやすいと考えたほうが現実的です。
- 基準4:期限があるか/繁忙期前、人員の入れ替わり、設備更新など期限が決まっているなら、自社だけで間に合うかを冷静に見積もる必要があります。
- 基準5:社長が判断を抱えているか/確認や判断が社長に集まっている状態では、その社長が改善の担当も兼ねることになり、二重の負荷がかかります。
3つ以上が「外部寄り」に該当するなら、少なくとも整理の工程だけでも外部の視点を入れてよい状態です。逆に、時間が確保でき、対象が1部署で、期限に余裕があるなら、まずは自社で進めてみるのが妥当です。判断に迷う場合は、中小企業の業務改善は何から始めるべきかもあわせて確認してみてください。

どちらを選ぶにせよ、先に自社で整理しておく3つのこと
判断の精度を上げるために、依頼するかどうかを決める前に、社内で次の3点を書き出しておくことをおすすめします。所要時間は30分から1時間程度で、特別な資料は要りません。
1つ目は、困っている業務を5つ書き出すこと。「請求書の作成」「現場からの日報の集約」のように、業務名で具体的に書きます。「なんとなく忙しい」ではなく、名前のついた作業に落とすことが大事です。
2つ目は、その業務に月何時間かかっているかを概算すること。正確な計測は不要で、1回30分×週4回=月8時間、という程度の見積もりで構いません。数字にすると、感覚で「大変」と思っていた業務より、実は別の業務のほうが時間を食っていた、と分かることがよくあります。
3つ目は、その業務がどこで止まっているかを書くこと。社長の確認待ちなのか、他部署からの情報待ちなのか、担当者しか手順を知らないのか。止まる場所が分かると、直すべきものが人ではなく仕組みであることが見えてきます。
この3点があれば、自社で進める場合は着手の順番が決まり、外部に頼む場合も見積もりの精度が上がります。費用の考え方については業務改善コンサルの費用はどう決まるかで詳しく整理しています。
現実的な答えは「組み合わせ」であることが多い
実際にうまくいっている会社の多くは、どちらか一方ではなく組み合わせを選んでいます。よくあるのは、業務の洗い出しと優先順位づけという「整理」の工程だけ外部の視点を入れ、手順の変更と定着は社内で進める形です。整理は視点が要る一方で期間が短く、実行は期間が長い代わりに現場の当事者でなければ進みません。向いている担い手が違うのです。
私たちがご相談を受けるときも、いきなりツールの話はしません。まず経営者から見えている課題と、現場が実際にやっている手順の両方を確認します。この2つはずれていることが少なくなく、社長が「時間がかかっている」と思っていた作業が現場ではすでに簡略化されていて、別の場所に手戻りの原因が隠れていた、ということもあります。仕事の流れを先に整理し、その結果として道具が必要なら選ぶ。これまで100社以上のご支援に関わってきた中でも、この順番を踏んだ会社ほど後の定着がうまくいく傾向がありました。
どこまでを外部に頼むかを決めるには、依頼先が「整理から入る相手か」「ツール導入から入る相手か」を見極める必要があります。判断の観点は業務改善コンサルの選び方にまとめています。
よくある質問
まず自社でやってみて、うまくいかなければ外部に頼むという順番でもよいですか
問題ありません。むしろ一度自社で試すと、どこで詰まるのかが分かり、依頼するときの説明が具体的になります。ただし期限は決めておいてください。「3か月やって対象業務が1つも変わらなければ相談する」と決めておくと、中途半端な状態が長引きません。
社員が少ないので、改善に人を割く余裕がありません。それでも自社でできますか
対象を1業務に絞れば可能性はあります。全部を一度に見直すと人手が足りませんが、月に最も時間を使っている業務を1つ選び、その手順だけを見直すなら週数時間でも進みます。範囲を広げるのは1つ目が定着してからで十分です。
ITツールを入れれば、自社だけでも改善できるのではないでしょうか
ツールは有効な手段ですが、順番が逆になると定着しにくくなります。無駄が残ったままツールを入れると、その無駄ごとデジタル化されてしまうためです。手順を整理してから道具を選ぶほうが、費用も時間も抑えられる傾向があります。
相談したら、必ず契約しなければいけませんか
そのようなことはありません。相談の目的は、自社でやるか外部に頼むかを含めて、次に何から手をつけるかの優先順位を整理することです。整理した結果、当面は自社で進めるという結論になることもあります。
まとめ:まず「判断できる材料」を揃えるところから
自社でやるか外部に頼むかは、費用の大小ではなく、社内に「継続して使える時間」と「当たり前を疑える視点」があるかどうかで決まります。どちらもあるなら自社で進められますし、欠けているならその部分だけ外の力を借りるのが現実的です。そして、どちらを選ぶにしても、困っている業務・かかっている時間・止まっている場所の3点を先に書き出しておくことが、判断の精度を上げる近道になります。
書き出してみて優先順位のつけ方に迷いが出るようであれば、その段階で一度ご相談ください。個別相談では、経営者から見えている課題と現場の実際の手順を突き合わせ、次に動くべき順番を一緒に整理します。売り込みのための場ではなく、判断材料を揃えるための時間としてお使いいただければと思います。

