この記事の3つのポイント
- 業務改善を社長一人で考えると、原因の見立てと優先順位が「社長から見える範囲」に偏り、手を付けても成果につながりにくくなります。
- 第三者に相談するメリットは、答えをもらうことではなく、経営者と現場の両方の視点から「何から変えるか」の順番を整理できることです。
- 相談する前に、困っている場面・かかっている時間・理想の状態の3点を書き出しておくと、短い時間でも次の一手が明確になります。
業務改善を社長一人で考えても進まないのはなぜか
「社員に任せたいのに、結局判断が全部自分に戻ってくる」「残業や手戻りを減らしたいが、何から手を付ければいいか分からない」。従業員30名以下の会社では、こうした悩みを社長が一人で抱え、夜や休日に改善策を考えているケースが少なくありません。ところが、考える時間を増やしても状況がなかなか変わらない、という声をよく伺います。
理由のひとつは、社長が見ている景色と現場が見ている景色が違うことです。社長には「確認に追われている」「同じ質問が何度も来る」という結果が見えていますが、その手前で現場が何に迷い、どこで手が止まっているのかまでは見えにくいものです。結果だけを見て対策を考えると、「ツールを入れよう」「ルールを増やそう」と打ち手が表面的になりやすく、導入しても定着しないという結果につながります。
もうひとつの理由は、日々の業務に追われている状態では、改善の優先順位を冷静に決める余裕がないことです。目の前で起きたトラブルに反応して手を打ち、次のトラブルでまた別の手を打つ。こうして施策が積み重なるほど、社員は「また新しいルールが増えた」と感じ、協力が得にくくなります。社長の能力の問題ではなく、一人で考える構造そのものに限界があるのです。

一人で考えたときに起きやすい3つの偏り
社長が単独で業務改善を考えたときに起きやすい偏りは、主に次の3つです。1つ目は「見えている問題だけを対象にする」偏りで、声の大きい社員やトラブルの多い部署に目が向き、静かに時間を奪っている業務が見落とされます。2つ目は「解決策から入る」偏りで、原因を整理する前にツールや外注先を探し始めてしまいます。3つ目は「全部を一度に変えようとする」偏りで、現場の負担が一気に増え、改善そのものが続かなくなります。
たとえば、現場確認に追われている社長が「日報アプリを入れれば報告が上がってくる」と考えたとします。しかし実際の原因が「何を報告すべきかの基準がない」ことであれば、アプリを入れても報告の中身は変わりません。確認が減らない背景については確認作業が多い会社の原因でも詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。
業務改善の相談とは何か|答えをもらう場ではなく順番を決める場
業務改善の相談とは、会社の困りごとを第三者と一緒に分解し、「どの業務から、どの順番で、誰と変えていくか」という優先順位を整理する場である、と私たちは考えています。よくある誤解は、相談すれば正解の施策やおすすめのツールを教えてもらえる、というものです。もちろん具体的な方法をお伝えすることもありますが、それ以上に大切なのは、社長自身が「次に何をすればいいか」を納得して決められる状態をつくることです。
第三者に相談するメリットは、大きく3つあります。1つ目は、社長の言葉を質問で掘り下げることで、困りごとの「原因」と「結果」を切り分けられることです。2つ目は、他社の事例と照らし合わせることで、自社の状況が特別なのか、よくあるパターンなのかを客観的に判断できることです。3つ目は、経営者の視点と現場の視点の両方から見直すことで、社長には見えていなかった手戻りや待ち時間に気づけることです。
YLSでは、ツールありきではなく、まず仕事の流れを一緒に整理するところから始めます。誰が、いつ、何を受け取り、どこで判断し、次の人に何を渡しているのか。この流れを言葉にしていくと、「この確認は本当に社長がする必要があるのか」「この転記は一度で済むのではないか」といった改善の糸口が、社長自身の口から自然に出てくることが多いのです。
相談で優先順位を整理するときの判断基準
では、相談の場で何を基準に優先順位を決めるのでしょうか。YLSでよく使うのは、「かかっている時間」「影響の広さ」「変えやすさ」の3つの軸です。かかっている時間とは、その業務に毎月どれくらいの時間が使われているか。影響の広さとは、その業務が止まったり間違ったりしたときに、何人・どの工程に波及するか。変えやすさとは、社内の合意や費用をあまりかけずに着手できるかどうかです。
この3つの軸で候補を並べると、「時間が多くかかり、影響が広く、しかも変えやすい」業務が最初の一手として浮かび上がります。反対に、効果は大きくても変えるのに時間がかかる業務は、2番目・3番目に回して準備を進める、という判断ができます。すべてを一度に変えようとせず、小さく始めて成果を社員と共有することが、改善を続けるうえでの土台になります。

優先順位を決める5つの手順
相談の場では、次の5つの手順で優先順位を整理していきます。
- 困っている場面を具体的に書き出す:「忙しい」ではなく「月末の請求書作成で毎回2日つぶれる」のように、場面単位で挙げます。
- それぞれにかかっている時間を概算する:正確でなくてかまいません。週に何回、1回あたり何分かを目安で出します。
- 現場の声を1〜2人分集める:社長の見立てと現場の実感がずれていないかを確かめます。
- 3つの軸で並べ替える:時間・影響・変えやすさで、最初に着手する業務を1つに絞ります。
- 最初の一手と確認のタイミングを決める:誰が、いつまでに、何を試すかを決め、1か月後に振り返る日を先に押さえます。
手順1と2は、相談の前に社長お一人でも進められます。業務の洗い出しの進め方は業務の棚卸しのやり方で手順をまとめていますので、準備の参考にしてください。
相談する前に整理しておきたい3つのこと
相談の時間を有効に使うために、事前に次の3点をメモしておくことをおすすめします。完璧な資料は必要ありません。箇条書きで十分です。
1つ目は「困っている場面」です。社長が一日のうちで、どの時間に、誰から、どんな確認や判断を求められているかを思い出して書きます。2つ目は「かかっている時間や回数」です。残業時間、やり直しの回数、同じ質問の頻度など、分かる範囲の数字があると、改善の効果を後から測りやすくなります。3つ目は「理想の状態」です。「月に数日は現場を離れて営業や採用に時間を使いたい」「自分がいなくても見積もりが出せるようにしたい」など、何のために改善するのかを言葉にしておきます。
この3点がそろうと、相談の場では「どこから変えるか」の議論にすぐ入れます。逆に、何も準備していなくても相談は可能です。話しながら整理していくこと自体が相談の価値でもあるので、「まだまとまっていないから」と先延ばしにする必要はありません。
自社で進めるか、外部に相談するかの目安
社内に改善を任せられる人がいて、社長が月に数時間を改善に充てられるなら、まずは自社で進める選択肢も十分にあります。一方で、「改善策を考える時間が取れない」「過去に取り組んだが続かなかった」「社員に言っても協力が得にくい」という状況であれば、第三者を交えて進め方を整理するほうが、結果的に早く進むことが多いと感じています。判断の目安は業務改善は自社でやるか外部に頼むかでも解説しています。
相談をきっかけに業務改善が動き出した事例
ある従業員20名ほどの会社では、社長が見積もりの最終確認をすべて担っており、確認待ちで案件が止まることが常態化していました。社長は当初「見積もりシステムを入れたい」とお考えでしたが、相談の中で仕事の流れを一緒にたどると、止まっている原因は「値引きをどこまで現場で判断してよいかの基準がない」ことだと分かりました。そこで、システム選びより先に値引きの判断基準を3段階で決め、一定の範囲内は担当者の判断で進めてよいことにしました。
その結果、社長への確認依頼は目に見えて減り、見積もりの提出までの日数も短くなったと伺っています。YLSがこれまで支援した100社以上の中には、業務時間を大きく削減できた事例もありますが、成果の出方は会社ごとの状況によって異なります。共通しているのは、ツールを選ぶ前に「どこで何が止まっているか」を整理したことが、改善の出発点になっているという点です。
まずは相談で「次に何をするか」を決める
業務改善は、正しい答えを探すことよりも、自社にとっての優先順位を決めて小さく動き出すことが大切です。社長一人で考え続けると、どうしても視点が偏り、打ち手が増えるほど現場が疲れてしまうことがあります。経営者と現場の両方の視点から仕事の流れを見直すことで、「まずこれだけやればいい」という一手が見えてきます。
YLSの個別相談では、今お困りのことを伺いながら、どの業務から、どの順番で整理していくかを一緒に考えます。すぐに何かを導入するための場ではなく、次に動く優先順位を整理するための時間としてご活用ください。相談当日の流れは業務改善の個別相談では何を話すのかでも紹介しています。
よくある質問
業務改善の相談は、課題がまとまっていなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。「何が問題なのか分からない」という状態から相談される方も多くいらっしゃいます。質問に答えていただきながら、困りごとを場面ごとに分けて整理していきますので、事前の資料作成は必須ではありません。
相談したら、必ずツール導入やコンサル契約を勧められますか?
いいえ。YLSはツールありきではなく、仕事の流れの整理を先に考える立場です。相談の結果、社内の役割分担やルールの見直しだけで進められると判断した場合は、そのようにお伝えします。
社員を相談に同席させたほうがよいですか?
最初は社長お一人でも問題ありません。ただ、現場の実態を知る方が同席すると、社長からは見えにくい手戻りや待ち時間が分かりやすくなります。状況に応じて、2回目以降に現場の方を交えることもできます。
費用に見合う効果があるか不安です。どう判断すればよいですか?
相談の段階で、改善したい業務にかかっている時間や回数を確認し、どの程度の変化を目指すかを一緒に整理します。効果の目安を事前に共有したうえで、進めるかどうかを判断していただけます。

