2026.09.30DX

二重入力・転記作業が多い会社の原因とは|中小企業が手作業の重複を減らす5つの手順

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二重入力・転記作業が多い会社の原因とは|中小企業が手作業の重複を減らす5つの手順

この記事の3つのポイント

  • 二重入力・転記作業が多いのは社員の手際の問題ではなく、「同じ情報がどこで生まれ、どこへ流れるか」が決まっていないことが主な原因です。
  • 減らす順番は「情報の発生源を1つに決める→転記の経路を洗い出す→不要な転記をやめる→残す転記にルールをつける→最後に道具を見直す」です。
  • ツールを入れる前に仕事の流れを整理すると、入力の手間だけでなく、確認・手戻り・社長への問い合わせもあわせて減りやすくなります。

見積書に書いた内容を受注表に打ち直し、受注表の内容を作業指示書に書き写し、最後に請求書へもう一度入力する。社員は毎日まじめに手を動かしているのに、残業は減らず、どこかで数字が食い違って社長が確認に呼ばれる。従業員30名以下の会社では、こうした「二重入力・転記」の積み重ねが、目立たないまま大きな負担になっていることが少なくありません。

この記事では、二重入力・転記作業が多くなる原因と、中小企業が現場の負担を減らすための具体的な手順、そして「どこから手をつけるか」の判断基準を解説します。

二重入力・転記作業とは?中小企業で見落とされやすい「見えない残業」

二重入力・転記作業とは、一度どこかに記録した情報を、別の書類やシステムに人の手でもう一度入力し直す作業のことです。紙からExcelへの打ち直し、Excelから会計ソフトへの入力、メールの内容を日報に書き写す作業などが代表例です。

この作業がやっかいなのは、一回あたりは数分で終わるため「たいした仕事ではない」と見過ごされやすい点です。しかし、1件5分の転記が1日20件あれば100分、月に20日働けば30時間を超えます。さらに、転記のたびに入力ミスの可能性が生まれ、ミスを見つけるための確認作業、見つかった後の修正作業が連鎖していきます。

社長から見ると「なぜこんなに残業が多いのか分からない」、社員から見ると「毎日同じことを何度も書いている」という食い違いが起きやすく、仕事の流れの中に「見えない残業」が組み込まれている状態だと言えます。

二重入力・転記が多い会社に共通する5つの原因

転記が多い会社を見ていくと、原因は個人の能力よりも、仕事の流れの決め方にあることがほとんどです。代表的な原因を5つ挙げます。

原因1:情報の「元」がどこなのか決まっていない

顧客の住所や金額などの情報が、見積書・受注表・顧客台帳のそれぞれに別々に存在し、どれが正しいのか決まっていないケースです。どれも正しい可能性があるため、社員は念のため全部を更新しようとし、転記が増えます。

原因2:部署や担当ごとに自分用の管理表がある

営業は営業用のExcel、現場は現場用のノート、事務は事務用の台帳と、担当ごとに使いやすい形で管理していると、部署をまたぐたびに書き写しが発生します。担当ごとには合理的でも、会社全体では重複です。

原因3:「昔からそうしている」手順が見直されていない

今は誰も見ていない控えや報告書が、やめてよいか判断できる人がいないまま続いていることがあります。

原因4:ツールを部分的に入れて、つなぎ目が手作業になっている

会計ソフト、勤怠システム、販売管理などを個別に導入した結果、ツール同士の間を人がつないでいる状態です。ツールを入れたのに楽にならない、という会社で特によく見られます。

原因5:社長の確認用に別の資料を作っている

社長が状況を把握するために、現場の記録とは別に報告用の表を作っているケースです。判断が社長に集まる会社ほど、この「社長のための転記」が増えやすくなります。

転記が起きている場所は、そのまま入力ミスとやり直しの発生源にもなります。やり直しが多いと感じている場合は、手戻りが多い原因とは|中小企業でやり直しが減らない理由と減らし方もあわせて確認すると、原因の重なりが見えやすくなります。

転記作業を減らすための5つの手順

では、何から手をつければよいのでしょうか。答えは「ツールを探す前に、情報の流れを一度書き出すこと」です。YLSが支援の現場で大切にしているのも、ツールありきではなく仕事の流れから整理するという順番です。具体的には次の5つの手順で進めます。

手順1:転記している作業をすべて書き出す

まず1〜2週間、「何を・どこから・どこへ・誰が」書き写しているかを簡単にメモしてもらいます。完璧な一覧でなくて構いません。社員に聞くときは「無駄な作業はありますか」ではなく「同じことを2回以上書いている場面はありますか」と具体的に聞くと、答えが出やすくなります。

手順2:情報ごとに「元になる場所」を1つ決める

顧客情報は顧客台帳、金額は見積書、作業予定は工程表というように、情報ごとに正とする場所を1つだけ決めます。他の書類はそこを参照する、という考え方に切り替えるだけで、転記の必要性そのものが下がります。

手順3:やめられる転記を先にやめる

書き出した転記の中から、「誰も見ていない」「元の資料を見れば分かる」ものを選び、試しに1か月やめてみます。いきなり全部を変えるのではなく、影響の小さいものから止めるのがコツです。

手順4:残す転記には担当とタイミングのルールをつける

どうしても必要な転記は、「誰が」「いつ」「どの時点の情報を」写すかを決めます。ルールがあるだけで、二重に更新したり、古い情報を写したりするミスが減ります。

手順5:最後に道具で自動化できる部分を検討する

流れが整理できてから、共有スプレッドシートやクラウドサービスで自動的に連携できる部分を検討します。この順番を逆にすると、ツールの中に今の非効率がそのまま持ち込まれ、定着しない原因になります。

仕事の流れを書き出す具体的な方法は、業務フローを見える化する方法|中小企業が最初に整理すべき仕事の流れで詳しく解説しています。

どこから減らすか?優先順位をつける判断基準

転記の一覧ができると、多くの会社で「思ったより多い」と感じます。すべてを一度に変えることはできないため、次の3つの基準で優先順位をつけます。

  • 回数×時間が大きいもの:1回は短くても毎日発生する転記は、月単位で見ると大きな負担です。まず件数の多いものから見ます。
  • ミスが起きたときの影響が大きいもの:金額、納期、顧客の連絡先など、間違えるとお客様に迷惑がかかる情報の転記は優先度を上げます。
  • 社長の確認が必要になっているもの:転記のたびに社長がチェックしている作業を減らせると、社長自身の時間も生まれます。

この3つのうち2つ以上に当てはまる転記から着手すると、効果を実感しやすくなります。反対に、月に数回しか発生せず影響も小さい転記は、後回しにして構いません。

ある製造業の会社では、受注から出荷までの間に同じ品番と数量を4回書き写していました。情報の元を受注表に一本化し、現場はその表を見て作業する形に変えたところ、転記の回数が減っただけでなく、数量違いの問い合わせが社長に来る回数も目に見えて減ったという事例があります。成果の大きさは会社によって異なりますが、「入力の手間」と「確認の手間」は一緒に減ることが多いと言えます。

ツール導入だけでは二重入力が減らない理由

「システムを入れれば二重入力はなくなる」と考えたくなりますが、実際にはツールを入れたのに転記が残る、あるいは増えるケースも少なくありません。理由は、ツールは決められた流れを速くする道具であって、流れそのものを決めてはくれないからです。

たとえば、情報の元が決まらないまま販売管理システムを入れると、Excelとシステムの両方に入力する期間がいつまでも終わらなくなります。現場が慣れた紙の記録を手放せず、紙からシステムへの転記が新たに生まれることもあります。これは社員のやる気の問題ではなく、「何をやめて、何をシステムに任せるか」を決めないまま導入したことが原因です。

だからこそ、経営者が考えていることと、現場で実際に起きていることの両方を見て整理することが大切です。社長の頭の中の理想の流れと、現場で毎日行われている手順には、たいていズレがあります。YLSでは、経営者と現場の両方から話を聞き、そのズレを埋めるところから一緒に整理しています。ツールが定着しない背景については、ITが定着しない理由とは|中小企業でツールが使われない原因と対策も参考にしてください。

社内だけで進めるときの注意点

転記を減らす取り組みは社内だけでも始められますが、いくつか注意点があります。まず、社員に「無駄を探して」と頼むと、自分の仕事を否定されたように感じて本音が出にくくなります。目的は責めることではなく、みんなの手間を減らすことだと最初に伝えてください。

次に、社長が一人で新しい流れを決めてしまうと、現場の事情が抜け落ちて、かえって手間が増えることがあります。書き出しは現場、やめる・残すの判断は社長と現場で一緒に、という役割分担が現実的です。

また、社内の目だけでは「当たり前」になっている転記に気づきにくいため、迷ったら第三者に話しながら整理するのも一つの方法です。

よくある質問

二重入力はどのくらいあると多いと考えるべきですか?

明確な基準はありませんが、同じ情報を3回以上書き写している流れがある場合や、転記作業が1日30分を超える社員がいる場合は、見直しを検討する目安になります。

Excelをやめてシステムに切り替えるべきでしょうか?

Excelそのものが問題とは限りません。情報の元が決まっていて、転記のルールが明確であれば、Excelでも十分に回る会社はあります。先に流れを整理し、それでも手作業のつなぎ目が多く残る場合に、システムへの切り替えを検討するのが順番です。

社員から「今のやり方で困っていない」と言われたらどうすればよいですか?

慣れている作業ほど、負担として感じにくいものです。「困っていますか」ではなく、「同じことを何回書いていますか」と事実を聞くと、話が進みやすくなります。数字で見えると、社員自身が負担に気づくことも多いです。

転記を減らすとどのくらいの効果がありますか?

会社や業務の内容によって大きく異なります。入力時間の削減に加えて、入力ミスの確認や修正、社長への問い合わせが減ることもあります。効果を見るときは、作業時間だけでなく、確認や手戻りの回数もあわせて記録しておくと判断しやすくなります。

まずは転記の流れを一緒に整理するところから

二重入力・転記作業は、一つひとつは小さくても、積み重なると社員の残業と社長の確認の手間を大きくしていきます。減らすための第一歩は、新しいツールを探すことではなく、同じ情報がどこで生まれ、どこへ流れているかを書き出すことです。

「うちの場合、どこから手をつければいいのか分からない」「書き出してみたけれど、やめてよいか判断がつかない」という場合は、個別相談をご活用ください。売り込みではなく、今の仕事の流れを一緒に確認し、次に何から動くかの優先順位を整理するための時間です。

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