2026.10.02生産性

役割分担の決め方|中小企業で「誰がやるか」が曖昧な仕事をなくす5つの手順

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役割分担の決め方|中小企業で「誰がやるか」が曖昧な仕事をなくす5つの手順

この記事の3つのポイント

  • 役割分担が曖昧な会社では、「誰がやるか」よりも「誰が決めるか」が決まっていないことが多く、確認と判断が社長に戻ってきます。
  • 役割分担は、人に仕事を割り振る前に、仕事の流れを書き出して「作業・判断・確認」に分けるところから始めると進めやすくなります。
  • 決めた役割は一覧表1枚にまとめ、月に一度見直すことで定着しやすくなります。ツールの導入は、役割が決まったあとに検討する順番が現実的です。

「この仕事は誰の担当なのか」と聞くと、社員同士が顔を見合わせる。結局、社長が自分で拾って片づける。従業員30名以下の会社では、こうした場面が日常的に起きています。人数が少ないうちは全員が何でもやることで回っていた仕事も、人が増え、取引先が増えるにつれて、誰の仕事なのか分からない業務が少しずつ増えていきます。

この記事では、役割分担が曖昧になる原因を整理したうえで、中小企業が無理なく進められる役割分担の決め方を5つの手順で解説します。あわせて、うまく分担できているかを確かめる判断基準と、自社だけで進めにくいときの考え方もお伝えします。

役割分担とは|「誰がやるか」と「誰が決めるか」を決めておくこと

役割分担とは、会社の中にある仕事の一つひとつについて、「誰が作業をするのか」「誰が判断するのか」「誰が確認するのか」をあらかじめ決めておくことである、と本記事では定義します。単に担当者の名前を割り振ることではありません。作業をする人だけを決めて、判断する人と確認する人を決めていない状態は、役割分担ができているとは言いにくい状態です。

たとえば見積書の作成を考えてみます。作成するのは営業担当でも、値引きの可否を決めるのは社長、金額の計算を確かめるのは事務担当、という会社は少なくありません。このとき、値引きはいくらまでなら営業担当が自分で決めてよいのか、事務担当はどの項目を確かめるのかが決まっていないと、見積もりのたびに社長へ確認が集まります。担当者は決まっているのに仕事が進まない、という状態の多くは、判断と確認の役割が決まっていないことから起きています。

役割分担が曖昧な会社で起きていること

役割分担の曖昧さは、目に見える形では表れにくいものです。多くの場合、別の困りごととして現場に出てきます。代表的なものを3つ挙げます。

誰もやらない仕事と、二人がやっている仕事が同時にある

備品の発注、取引先への折り返し連絡、共有フォルダの整理など、担当が決まっていない仕事は「気づいた人がやる」ことになりがちです。その結果、誰も手をつけないまま期限が過ぎる仕事と、二人が別々に同じ対応をしてしまう仕事が同時に発生します。

確認と判断が社長に集まる

判断する人が決まっていない仕事は、最終的に社長のところへ来ます。社員にとっては、決めてよいか分からないことを自分で決めるより、社長に聞くほうが安全だからです。社長の側も、聞かれれば答えてしまうため、その状態が続いていきます。現場確認に追われている背景については、確認作業が多い会社の原因でも詳しく解説しています。

特定の人に仕事が偏る

役割が決まっていない会社では、仕事ができる人、頼みやすい人に業務が集まります。その人が休むと仕事が止まり、本人は忙しさから周囲に教える時間も取れません。偏りが長く続くと、その人にしか分からない仕事が増え、属人化が進んでいきます。

役割分担の決め方|中小企業が進める5つの手順

役割分担を見直すとき、いきなり組織図や担当表を作り始めると、現場の実態と合わない表ができあがりがちです。先に仕事の流れを確かめ、そのあとに人を当てはめる順番で進めます。

手順1 対象の業務を1つに絞り、流れを書き出す

最初から全社の業務を対象にすると、書き出すだけで時間がかかり、途中で止まりやすくなります。まずは「受注から請求まで」「問い合わせから見積提出まで」のように、社長への確認が多い業務を1つ選びます。そして、その業務が始まってから終わるまでの流れを、実際にやっている順番どおりに書き出します。書き出し方に迷う場合は、業務の棚卸しのやり方を参考にしてください。

手順2 各工程を「作業・判断・確認」に分ける

書き出した工程の一つひとつを、手を動かす「作業」、選ぶ・決める「判断」、内容を確かめる「確認」の3つに分けます。たとえば「見積書を作る」は作業、「値引きに応じるか決める」は判断、「金額に誤りがないか見る」は確認です。この分け方をすると、社長が担っているのが作業ではなく、判断と確認であることが見えてくる会社が多くあります。

手順3 いま実際に誰がやっているかを書き込む

次に、それぞれの工程を現在誰が担っているかを書き込みます。ここで大切なのは、本来の担当ではなく、実際にやっている人を書くことです。社長と現場の両方に聞くと、認識がずれている工程が見つかります。社長は任せたつもりでも、現場は毎回確認を取っている、といったずれです。経営者の見え方と現場の見え方の両方を並べることで、曖昧になっている箇所がはっきりします。

手順4 工程ごとに責任者を一人に決め、判断の範囲を言葉にする

曖昧な工程について、責任者を一人に決めます。「営業部で対応」「みんなで確認」のように複数人や部署を責任者にすると、結局誰も動かない状態に戻りやすいためです。あわせて、判断を任せる工程では、どこまで自分で決めてよいかを具体的な条件で示します。「値引きは5%までなら担当者が決める。それを超える場合は社長に相談する」といった書き方です。判断基準の作り方は、権限委譲の進め方で手順を紹介しています。

手順5 一覧表1枚にまとめ、月に一度見直す

決めた内容は、業務の工程を縦に、担当者を横に並べた一覧表にまとめます。作業する人、判断する人、確認する人、不在時の代わりの人が1枚で分かる形が理想です。表は一度作って終わりにせず、月に一度、実際の動きと合っているかを確かめます。合っていない箇所は、人の問題ではなく表の決め方に無理があったと考えて直していくと、現場の納得を得やすくなります。

役割分担がうまくいっているかの判断基準

役割分担を決めたあと、機能しているかどうかは次の4点で確かめられます。1つ目は、社長への確認の件数が減っているかです。1週間、聞かれた内容を簡単にメモしておくと、決める前との違いが分かります。2つ目は、担当者が休んだ日に仕事が止まらないか。3つ目は、「これは誰の仕事ですか」という質問が社内で減っているか。4つ目は、同じ対応を二人がしてしまう重複が起きていないかです。

4点のうち複数が改善していなければ、判断の範囲がまだ言葉になっていない可能性があります。担当者の名前は決めたものの、どこまで決めてよいかが伝わっていない状態です。その場合は手順4に戻り、実際に確認が発生した場面を題材にして、判断の条件を一つずつ足していきます。最初から完全な基準を作ろうとせず、起きた事例をもとに育てていく進め方が現実的です。

ツールを入れる前に役割を決めておく理由

担当が曖昧なことへの対策として、タスク管理ツールやチャットツールの導入を考える経営者は少なくありません。ツールは、誰が何を担当しているかを見えやすくする点で役に立ちます。ただ、誰が判断するのかが決まっていない状態でツールを入れても、ツール上で社長への確認が増えるだけになりがちです。入力する人と見る人が決まっていなければ、使われなくなることもあります。

順番としては、仕事の流れを書き出し、役割と判断の範囲を決め、そのうえで必要であればツールを選ぶ、という流れが無理のない進め方です。役割が決まっていれば、ツールに求める機能もはっきりし、選ぶときに迷いにくくなります。紙やExcelの一覧表で十分に回る会社もあります。

自社だけで進めにくいときの考え方

役割分担の見直しは、社内だけで進めると止まりやすい取り組みでもあります。社長が決めた分担に対して現場は意見を言いにくく、現場の事情は社長に伝わりにくいためです。「なぜ自分だけ仕事が増えるのか」という不満が表に出ないまま、決めた表が使われなくなることもあります。

第三者が入ると、経営者の考えと現場の実態の両方を聞いたうえで、ずれている箇所を整理しやすくなります。YLSでは、ツールありきではなく仕事の流れから整理することを基本にしており、役割と判断基準を整えたことで確認の往復が減り、作業時間の削減につながった事例もあります。ただし効果は会社の状況によって異なるため、同じ結果をお約束するものではありません。外部に頼むかどうか迷う場合は、業務改善は自社でやるか外部に頼むかの判断基準も参考になります。

よくある質問

役割分担を決めると、社員が「それは自分の仕事ではない」と言い出しませんか?

担当の線引きだけを決めると、そうした反応が出ることがあります。防ぐには、担当者が不在のときに代わりを務める人をあわせて決めておくこと、担当外の仕事に気づいたときの連絡先を決めておくことが有効です。役割分担は仕事を押しつけ合うためのものではなく、誰に声をかければ仕事が進むかを明らかにするためのもの、と社内に伝えておくとよいでしょう。

役割分担の見直しにはどのくらいの期間がかかりますか?

業務を1つに絞れば、流れの書き出しから一覧表の作成までは2〜4週間ほどで進められる会社が多い印象です。その後、月に一度の見直しを2〜3回重ねて、実際の動きに合うよう整えていきます。全社の業務を一度に対象とするより、1つの業務で進め方をつかんでから広げるほうが続けやすくなります。

役割を決めても、結局社長に確認が来てしまいます。どうすればよいですか?

確認が来た内容を記録し、「自分で決めてよかったもの」と「社長が決めるべきもの」に分けてみてください。前者が多い場合は、判断の条件が伝わっていない可能性があります。確認が来た場面ごとに条件を言葉にして一覧表へ書き足していくと、少しずつ確認の件数が落ち着いていきます。

まとめ|役割分担は仕事の流れを見てから決める

役割分担が曖昧な会社では、誰もやらない仕事と重複する仕事が生まれ、確認と判断が社長に集まります。見直すときは、業務を1つに絞って流れを書き出し、作業・判断・確認に分け、責任者を一人に決めて判断の範囲を言葉にする、という順番で進めます。人の入れ替えやツールの導入を考えるのは、そのあとで間に合います。

とはいえ、どの業務から手をつけるべきか、どこまでを現場に任せてよいかは、会社ごとに事情が異なります。自社だけでは整理しきれないと感じたら、まず相談して、次に動く優先順位を整理するところから始めてみてください。YLSの個別相談では、経営者のお話と現場の状況の両方をうかがいながら、最初に見直す業務を一緒に整理します。

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